ヨンパチ学問ニッキ

日々の耳学問メモ。BBC RadioとCBC Radioで聞いたものの記録。

ベジタリアンとの暮らし(不満爆発編・その3=最終回)

娘は今日から冬休み。娘はここ数日風邪気味。イギリスの小学校は欠席に関するポリシーが極端で、例えばOxfordshireの場合、正当な理由なく欠席すると親一人につき一日60ポンドの罰金を払うことになる。我が家の場合は親二人の家庭なので一日120ポンドになる。出席率は学校評価に関わり、ウェブで公表もされているので学校は神経質になっていて、小学校から家庭へのニュースレターには「お子さんが風邪を引いていても学校に連れてきてください」と書かれている。

さて、ベジタリアンとの暮らし完結編。夫は、現在の食をめぐるシステムは不正であり、肉食によりその不正なシステムの存続に加担することになるので、自分はその悪循環を断ち切ることに貢献したいとかいう主張をする。なるほど、それであなたの公正な食事は誰が用意するの?

詰まるところ、夫が実践するベジタリアニズムの我が家における最大の問題点にして弱点は、ベジタリアンの食事を用意・調理する負担を誰が負うのかという視点が抜け落ちている点にある。食事に関して、外食をするか、あるいはパスタや冷凍餃子をゆでたり、電子レンジで食べ物を温めることしかしない場合、別の誰かが夫が食べられるものを調理してあげなければならない。

最近の英語圏の国々の多くでは、ベジタリアンやビーガン食がスーパーでも外食でも豊富にあるので、このことはそれほど問題にならないかもしれない。ベジタリアンやビーガンを実践するのであれば少々余計にお金を払う必要があるかもしれないが、それはあくまで個人の選択の帰結である。(ただ、我が家では最近まで料理および料理に伴う買い物は基本的に私の担当だったので、なぜか私も負担することになっていた。頭に来たので、ベジ食が欲しければ夫が自分で買うように方針を変えた。)

だが、日本のようにベジタリアン・ビーガンの選択肢がスーパーでも外食でも極めて限定的である場合には、自炊しなければ実現できない。そうすると、誰がその理念にのっとった食事を用意するのかという問題がでてくる。しかも、一般的ではない調理方法で料理をしなければならないので、料理をする人の負担は基本的に増える。でも日本にいる間、ベジタリアンを標榜する夫はほとんど台所に立たなかったし、忙しいから、何を買って良いかわからないからという理由でベジ食を手に入れる努力も非常に限定的にしかしなかった。

なお、夫が日本にいる時から主張する解決策は、大学の生協食堂に家族で行き食事をすればよいというものである(我が家は夫の勤める大学まですぐ)。生協食堂は皿ごとに食べるものを選べるので、ベジタリアンの理念にかなうものを選んで食べれば良い。娘が食べられるものもある。価格も安いし、後片付けもしなくてよいし、わざわざ自炊する必要はないと。それって解決策なのか?また、なぜそれほどまでに自分で料理することを拒むのか?そして何より、自分が食べるものに必要な調理プロセスを他人任せにするベジタリアニズムって、公正なの?

私の不満はこの点にあり、それでときどき夫を「貴族的ベジタリアン」と揶揄している。貴族め!

おしまい。合理的配慮について書かないで済ませてしまった。